ホラー映画『ダーケスト・ウォーター』のあらすじ・レビュー情報

出だしのアバンタイトルから薄暗い画面で不気味さを醸し出し、続いて館に起きる怪異、3つのルールの歌。
この構成は上手いなと思った。

全般的にフォーカスの切り替え方やアングル、そしてキャメラワークと凝った撮影がよかった。
館内の撮影も陰影を上手に使っており、ホラー作品の雰囲気を見事に出していた。

屋敷だけでなく、小さな村、林の中の道など場面場面を上手くストーリーに織り込んだ形で恐さを表すスタイルも良く出来ていた。
全体的にダークな雰囲気で死や不吉なイメージを意識させる演出を前面に出していた。

ホラー系の映画では不思議と水、水辺などがよく出てくる。水の持つ恐さとは何なのだろう。

アイルランドに実在する「世界一不気味な屋敷」と言われる館でロケを敢行したらしいのだけれど、ここでホラー映画を撮影したくて選んだのだとしたら、「もったいない！」としか言いようがない。
もっと脚本と演出が良かったら、この不気味なお屋敷がずっと引き立っただろうに。

最初に、３つの掟というのが登場する。子守唄のように歌われていて、言ってみればこの映画のキーワードとなる。
「女の子、男の子、よく聞いて。
０時の鐘が鳴る前にベッドに入りなさい。
よそ者を家に入れてはいけません。
２人は離れてはいけません。
よき姉よき弟よ、この3つの注意に従いなさい。
２人の血が私たちだけのものである限、私たちは下から見守ることでしょう」

この詩は、映画を見終わってからあらためて見ると、ゾワ～～～～っと怖くなる。
そういうことだったのか。

それにしても、不健全きわまりない方法だなあと、だいぶ気分が悪くなってしまった。

私がこの映画でいちばんツッコミを入れたかったのは、食事に関することだった。
貧乏になってしまって、使用人などひとりもいない。

姉が食料品を買い出しに行くシーンはあるが、彼女が料理をするところは全く出てこない。
食卓にふたりで座るシーンもあるが、皿には何も乗っていない。
このふたり、空気を食べて生きているのか？なんとも不自然きわまりなかった。

後味の悪いバッドエンドの衝撃的な陰鬱映画のことを「胸糞映画」というそうである。
わかるなあ。ムナクソって…　この映画もその類に入ると思う。

バッドエンドではないのだが、陰鬱であることには変わりない。
鑑賞中も鑑賞後も、間違いなく心がドヨーンとする。
おまけに、冒頭に書いたとおり、映画そのものの出来がさほど良くない。

タイトル画像を見て、即ホラーだと思ってしまったのがいけなかったのかしれない。ホラーというよりはサスペンス寄りだと感じた。

見たあと、レビューを書かずに放置していた間に、「ダウントン・アビー」を見た。
一見、陽と陰、光と影、健全と退廃、そう言った対照的な映画に思えるのだが、もしかしたら根は同じで、表裏一体かもしれないと気が付いた。先祖代々続く館を守り、次の世代に引き継ぐために努力する。
その方法が全く違うだけなのではないか、と。

シェープオブウォーターと犬神家の一族とあとミスペレグリンと何かを足して3で割ったような作品。映像がそれなりに美しいし、適度に怖いし、最後は30%ハッピーエンド？

さほどグロいシーンも出てこないから、夜寝る前に見てもおトイレには行けます。
ただ、遺伝子学的な考察はおもいっきり無視している。

最後にあの豪邸はどうなる？やはり、国が没収？ だけが気になった。
と思ったら、この屋敷アイルランドに実在する築668年の減価償却のとうに終わった「ロフタスホール」。
実際に幽霊が出ることで有名だそうです。なるほど～。