『アウトブレイク』のレビュー・VOD・関連情報

新型コロナ肺炎が猛威を奮う昨今に見返すべき傑作。

ウィルスの潜伏期間と発症後致死迄の時間による封じ込めの難易差、接触感染と飛沫・空気感染の違い、発病者のウィルス検査やワクチン精製に係わる宿主からの抗体確保の難しさ等、ウイルス・パンデミック対策の難しさが非常に良く判る。

本作は名優ダスティン･ホフマンだけじゃない、観たらツボに嵌まる実に巧いウィルスパンデミック映画の最右翼。
さすが｢Uボート｣や｢パーフェクト･ストーム｣を撮ったウォルガンフ･ペーターゼン監督らしい現実主義の冴える作品で、ドナルド･サザーランドやモーガン･フリーマン、レネ･ルッソやケビン･スペーシー等の脂の乗った重厚な俳優陣や軽快なストーリーテンポが光る秀作で、二転三転の展開に二時間があっという間だ。

主題の、民間疫学機関と軍利思想の相剋、一見完璧に見える社会システムを蝕む人為的不正リスク、非常時こそ問われる自律したプロ意識など、主題のウィルス･パンデミックを多重な社会性テーマが脇を固めており、何度観ても飽きさせない。

アフリカの小さな村の出来事が全米を震撼させる事態に発展するモターバ･ウィルスの伝播スピード、ただ一体の抗体保持する宿主を探し当てるまでの謎解きや捕獲までのハラハラ感に、隠し味のコミカルさも上手く挟み込むセンスの良さに素直に驚く。

重すぎず、軽すぎず、その丁度良い温度感はペーターゼン監督への失礼は承知で言わせて貰えればスピルバーグ映画のごとき旨さで、無印良品なお薦め作品。
未知の凶悪ウィルスが蔓延する怖さを重視する政府の合理的判断のドライな現実に身構えると共に、研究者の有るべき姿に触発される。

昔からの作品ファンだが、今回DVDからBlu-rayに買換えて格段の画質UPに大満足。

２０００年前後、もしくはそれ以前の映画はなんでこんなに良作が多いんだろうか？　
ネゴシエーター、逃亡者、ゲーム、挙げればキリがないが、中身で魅せてくれる”本物の映画”が多いと感じる。

感染系はCGでリアルに見せても怖さにはならない。
本作は犠牲者への感染経路のバリエーションが多様でこういうところの巧さが映画を一級品と駄作とを分つポイントですね。

国家規模のスケールのデカさに、ヘリのチェイス、悪党の処罰、夫婦の復縁など、猿と無表情な役者の顔だけの地味なジャケットからは想像もつかないような豪華な展開で、相当数の死者が出てるのにやけに気分スッキリに終わる作品だった。

他に感染系では、イーライ・ロス監督の『キャビンフィーバー』もかなり怖いので是非おススメ。

本作のウイルスの怖さは何だろうか？　
言うまでもなく生体の免疫の活性度を無視して、無条件に侵入し高速で乗っ取ってしまうことだ。
しかし、過去に変異は一度だけあったが、作中では抗体が完成すれば解決へ向かった。

2020年1月26日、今まさに中国武漢で発生した新型肺炎が世界に猛威を振るっています。
改めてこの映画を見るべきと思いました。

現時点で詳しい感染経路もわかっていません。取れうる対策はインフルと同じマスクにうがい、手洗いだけ。
武漢も封じ込めにあっている。映画と同じ展開です。

この先どうなっていくんだろう。
映画ではなかったですが、SNSを通じて様々な情報が拡散されています。

この先、人はどう立ち向かっていくのか。まさに試練に直面しているといえます。
どうか、最悪な方向にはいきませんように。
最前線で戦っている人たちや患者さんに、どうか平穏が訪れますように・・・。